マチナカのケモノミチ=デザインのヒント
誰がデザインしたのか知らないけれど、言われてみれば確かにグッドデザイン。
そんな日常の中にある優れたデザインを紹介する「まちかどグッドデザイン賞」のコーナーです。
どこにでもある、こんな街中のひとコマ。
これのどこがグッドデザイン?と言われてしまいそうですが、ここはショッピングモールに続く道の植え込み。
そう、まちかど。
こんなところに獣道(ケモノミチ)がありました。
写真のこちら側には駐輪場があり、植え込をはさんで歩道があります。
下の図のような地形になっています。
普通に歩道に沿って歩いていると、青い点線のように歩かなければいけませんが、大回りです。
植え込みを横切ればピンクの点線のようにショートカットできます。
設計上は青い点線が動線として考えられていたと思いますが、ここを通る人々によって植え込みにケモノミチができていました。
「ここを通る時に近いから。」
きっと、ただそれだけの理由でできたこのケモノミチ。
設計者の意図とは違いますが、この道の利用者が歩く事で自然に生まれた近道のデザイン。
※植え込みに入るなんて非常識だ!と思われた方にはすみません。しかし、なぜここに道が出来たのかと思うと考えさせられます。
このように、設計・デザイン上、想定されていた以外の使い方がユーザーによって生まれる事があります。
例えば、
・炊飯器でケーキを焼いたり
・車のハザードランプで感謝を伝えたり
・三角定規の穴に指をいれて遊んだり
設計・デザイン側で、初めから全ての間違った使い方を想定することは難しい事です。
しかし、本来の意図とは違う使い方がされていることに気づく事で、新たな商品アイデアや改善点が見えてくる気がします。
マチナカのケモノミチを通って、そんなことを考えた春の昼下がりでした。
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追記【2018/6/4】
人々が自然に同じ場所を歩くことで、地面がすり減って形成された通り道を、景観設計の分野では「希望線」(Desire Line)と呼ぶそうです。
ニューヨークのセントラルパーク内の歩道を再整備した際にはこの希望線を基準に整備がすすめられたそうです。
希望線の原理はWebサイトの解析や、製品の傷み具合から推測される改良点への応用ができます。
“希望線 – 物体や環境が使われて痛んだ傷跡のこと。そこには物体や環境との望ましい相互関係の在り方が示される”
出典:Design Rule Index[第2版]― デザイン、新・25+100の法則