[ブランディング入門]ブランディングとは何をするのか?成功事例をお話しします | デザイン事務所 しろくまデザイン | 奈良

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[ブランディング入門]ブランディングとは何をするのか?成功事例をお話しします

旗を掲げる人

皆さんも近年ブランディングという言葉をよく耳にするかと思います。

会社の名前・サービスや商品を覚えてもらい、ブランドとして認知してもらう事で、
独自化を図りファンを増やす。市場での占有率を上げる。売り上げを伸ばす。
そういった企業価値を高める施策として「ブランディング」という言葉はよく聞くけれど、

・ 理論は分かるけど、具体的に何をすればいいのか分からない。
・ 見た目をオシャレにすることでしょ?
・ ブランド、ブランディングって高級品の話でしょ?
・ デザイナーに任せとけばいい?

という疑問もあるかと思います。

今日お話しする、とあるブランドは様々なブランディングの施策を行った事により、
4年で5倍の売り上げを上げるようになりました。

少し長めの話になりますが、一体そこにはどんな施策があったのでしょうか…

とあるブランドの売り上げが4年で5倍になるまで。

Aさんは、とある製造メーカーの商品開発部にデザイナー兼管理職として着任しました。

経営陣からは、
「自社ブランド(BtoC)を会社の事業の一つの柱にしたい。」
という目標が共有されました。

そのメーカーは、下請けとしては有名なブランドの商品を製造していたり、
業務用品(BtoB)の分野では創業70年を超える老舗として、業界内での信頼はありました。

Aさん着任当時のブランド年間売り上げは2千万円ほど。
ブランドが生まれてからは既に10年ほど経っており、商品種は10種類ほどありました。

製品の品質は良いものの、自社ブランドの事となると…
・低価格帯
・エンドユーザーに認知されていない
・商品のテコ入れは少なく新商品発売は不定期
・下請けのデザイン提案や生産管理に忙しく後回し
といった状態でした。

下請けで生産している有名ブランドの製品と中身は同じなのですが、
自社ブランドは無名であるために低価格・無関心を強いられていました。

商品ラインナップの見直し

まず手を付けるにあたり、これまでの商品ラインナップを客観的に見たところ、出しっぱなしの状態。
何年もリニューアルしていなかったり、
在庫を既存の取扱店で何年もかけて販売しているような状態でした。

在庫管理ソフトで商品ごとの販売数を集計し、回転していない商品は廃盤。在庫限りに。
商品の種類は半分ほどにし、毎年リピートのある商品は定番商品として位置づけました。

市場が伸びているところへ向けて商品をつくる

これまでの商品開発方法はストレートに言うと「思いつき」。
・自社の技術でこんなことができる。
・OEM(製造委託)先のお客さんへの営業の為に作ってみよう。
・在庫生地で作れるものを作ろう。
・海外にはこんな商品があるから作ってみよう。
といった具合でした。

そこから、新商品開発の着眼点を変え
「レジャー白書」などの市場規模や動向をまとめた統計資料を参照し、
参加人口が増加しているジャンルに向けて商品開発をしてゆく事にしました。

具体的に言うと、
釣り市場向けの商品。当時、市場全体では参加人口・市場規模共に縮小が続いていましたが、
ソルトルアーフィッシング(海でのルアーフィッシング)は人口・規模共に伸びていました。

ブランドストーリーとコンセプト

うまく伝えることが出来ていなかっただけで、
ブランドのストーリー(歴史)や「水への挑戦」という素晴らしいコンセプトは既に存在していました。
それは変えずに、もう一度きちんと伝えてゆく事にしました。

パッケージの変更・統一

これまでの商品は、商品ごとにパッケージのデザインが異なっていたため、店舗で複数の商品を取り扱って頂いていても統一感が出にくい状況でした。
商品自体のデザインはシンプルな物だったので、まずはパッケージのリニューアルから。

ターゲット層の趣味嗜好を調査し、
色使いを白・黒・ブルーを基調としたものに統一。基本のパッケージデザインにルールを決めました。
商品の見え方にラインナップ感をもたせたことで、売り場にブランドの小さな「統一感」が生まれました。

見た目のブランドっぽさ・らしさの基礎ができてきました。
まずは掃除をして、服を着せ替えて、統一感が出て、おしゃれな感じになってきたといった感じですね。

テスターさんのフィードバックを商品開発に取り入れる

営業マンのY君は日々色々なブランドの話を聞いてきており、
「製品の仕様を決める時は、テスターさんの意見を聞いた方がいい」と助言をくれました。

Aさんは、統計資料によりデータ上では伸びている市場が分かっても、
実際にその商品を使う人が何を求めているのか直接ヒアリングした事はありませんでした。

Y君の繋がりで紹介していただいたテスターさん(セミプロや雑誌編集の方)にお願いして
商品を使ってもらったり、評価や改善点をもらったり、ブログや雑誌で商品を紹介していただいたりしました。

テスターさんからフィードバックをもらうようになり
商品開発⇒テスト&フィードバック⇒改良
という流れができて、新商品を毎年発売できるようになり、一旦減らした商品数も改めて増えてゆきます。

テスターさんもサンプルや新商品を無料でいち早く使えたり、自分の意見が反映されることにやりがいを感じてくれました。

ブランドの成長を助けてくれる外部の人が仲間に加わり、実際にユーザーが求めている・気が利いているものを開発できるようになりました。

展示会のブースデザイン変更

これまでも毎年展示会に出展していたものの
ブースデザインにはあまり力(お金)をかけておらず、手作り感満載。スタッフの服装はバラバラ。
統一感のない印象でした。

会社からそこに投資して頂き、広告代理店にイメージを伝えブースデザインを依頼し、
パッケージと同じ色使いで展示ブースの制作を依頼。スタッフはユニフォームを着ることにしました。

立ち止まって商品を見てくれる人が前年までより明らかに増え、テレビで取材していただくような事が起こり始めました。

ブランドのホームページを制作

ホームページでは、社内では当たり前の事だけれど、お客さんには伝わっていなかった「良いところ」を改めて掘り出し、
他社には簡単に真似できない強みや歴史があることを記載。
商品の使用方法を説明するYoutubeチャンネルも作りました。

テレビや雑誌に出演している、プロの釣り師さんがこんなことを仰っていました。
「プロが使っている・ホームページに載っている・お店で売っている。これが揃えば売れます。」

これは、「有名人が推している。調べれば情報がある。実際に買える。」
という購買行動のパターンなのかもしれません。
(※既存の商流への配慮から、自社でのオンライン販売はこの時は実現しませんでしたが、後に開設されました。)

変化の兆し

これらの活動を続けるうちに販売店のバイヤーさんの対応が変わってきました。
それまでは「ブランド品以外は安くないと売れないですよ」という対応だったのが、
「ブランドを知っています。○○さんが使っているのを雑誌で見ました。取扱いしてみましょう。」
というポジティブな対応を頂けるようになり、
さらに店舗でのお客さんの声や、パッケージの改善点なども教えて頂けるようになりました。

営業の皆も、各地域の主力店舗と共同でキャンペーンを開催してもらい店頭に立つなど
日本中をまわってアゲてゆく活動を展開してゆきました。

軌道・成長サイクルに乗る

取扱店舗が増えてきたので、商品ラインナップをレジャーやファミリー向けにも展開。
レジャー・ファミリー向け商品がある事で、スポーツ量販店や某巨大スーパーでの取り扱いも決まるなど、
好循環が始まり、ブランドの認知と取扱店舗はどんどん増えてゆきました。

売上は億を突破し、右肩上がりになりました。
会社の皆が自社ブランドに自信を持ち始めました。

ブランディングは経営

もっと細かく見れば個別の商品開発の話や営業活動の話など、尽きる事は無いのですが
これらの「ブランディング」の力によって、
弱小だった自社ブランドは、会社の売り上げの柱となるまでに成長しました。

限られた経営資源でこれまでのやり方を変えてゆく事は、会社にとっては投資であったり、
対立や、社員の皆さんのやる気を上げる必要があったりと、かなりのパワーを要します。

ブランディングはただ見た目をオシャレにするだけではなく、経営者がまずは旗を振って会社の向かう方向性を決める事。
社員の意思統一を図り、その方向に向かう事。
デザインはその見え方、見せ方をコントロールする役目です。

ロゴ・ホームページ・パンフレット・商品などの個別のデザインは、その会社やブランドを構成する一つ一つのパーツであり武器です。
それぞれがおしゃれなデザインであっても、統一感が無ければパワーが分散され効果が無くなってしまいます。


今回は既存ブランドを蘇らせるブランディングの話でしたが、
新規のブランドの立ち上げに伴い、
ブランドらしさの定義・ターゲット層・見た目のデザインテイストなどを検討、立案してゆく事もブランディングです。

理想では初めからブランディングを計画してゆくのが良いですが、
「そんなにまとめて依頼できない!」という場合には、
まずはちゃんとしたロゴから作ったり、パッケージを刷新してみたり
これから作ってゆく制作物のイメージを統一してゆくことで、
少しずつ「○○さんらしいね。○○さんっぽいね」というイメージを作ってゆくことも可能です。

もう少し詳しく話を聞きたい。
自社ではどんなブランディングができるか相談してみたい。という方、
ご興味がありましたらぜひご相談ください。


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