デザイン事務所|しろくまデザイン

アーティストになれたデザイナー ~デザインとアートの融合~


先日は、ユーザーの魂が自分に下りてきたと思ってデザインをする「イタコスタイルのデザイナー」について紹介しましたが、
今回は、デザイナーでありながら作品が美術館に収蔵・展示されてしまうような、「アーティスト・デザイナー」の存在について解説してみようと思います。

デザインとアートの違い

デザインとアートの違いは時々議論されるテーマであり、2つの違いについては、人により意見が異なるかもしれません。
ここでは私の解釈となりますが、

■デザイン⇒課題を解決するために、物事のあるべき姿を考えること。より便利に、より美しく、より分かりやすく。製品やサービスをより良くしてゆくための行動。商業的な側面を持つことが多い。

■アート⇒美しさや感動、心情・感情・問いかけ、世界観 などを視覚や音を通して感覚的に伝える行動。理屈抜きに人の心が動いたりする。

ざっくりではありますが、このように考えています。

アートとして受け入れられたデザイン

現代美術を扱っている美術館、例えばMoMA(ニューヨーク近代美術館)では
1930年代からモダンアートや工業製品などの「デザインされたモノ」を集めた展示会を開催しています。
【Useful Objects展 1938~1948 / Good Design展 1950 ~ 1955】
当初は、大衆にはアート(美術)として受け入れられず強い抵抗があったそうですが、
1953年のタイム誌に「使いやすさと見た目の良さがあれば、ホウキにもアートがある。」と評論が掲載されました。

【参考】
What Do We Mean By Good Design?(MoMA)
MoMAの歴史

物質的にも情緒的にも豊かな暮らしを求める人々にとって、
美術館により評価・セレクトされた、使いやすく見た目も良い製品は、日常で使えるアートとして広く受け入れられるようになったのでしょう。

アーティストとしても認知されるデザイナー

製品においては、メーカー名やブランドが表に出る事が多く、デザイナーは影の存在である事が多いのですが、こうして現代美術館に収蔵されるようなモノをデザインしたデザイナーにもスポットライトが当たるようになります。

例えば、バタフライスツール・エレファントスツールをデザインした「柳総理」氏(1915–2011)は、MoMAのウェブサイトでは「アーティスト」と紹介されています。

美術館に作品が収蔵されていたり、個展が開かれるような日本人デザイナーを少しご紹介してみようと思います。

吉岡徳仁(吉岡徳仁デザイン事務所)

“デザイン、建築、アートの領域において活動。国際的なアワードを多数受賞し、作品は世界の主要美術館に永久所蔵されている。Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」に選出。東京2020オリンピックでは聖火リレートーチのデザインを担当している。”
(ウェブサイトより引用)

水・空気・光と物体。感覚とモノの境界線を描いているような透明感。ミニマルを突き詰めた・詩的な美しさを作る方。極限までシンプルになったモノに情緒的な付加価値が秘められています。

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佐藤可士和

“東京都出身のクリエイティブディレクター、アートディレクター、グラフィックデザイナー。慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科客員教授。”
(wikipediaより引用)

大規模な広告・ブランディングプランを実現させるプレゼン力とプロデュース力。広告で街をハッキングし、日常の見慣れた風景にバグを起こすような技もあれば、雑多な物事を隅々まで整理して企業やブランドの価値をシンプルに力強くアウトプットする技もお持ちです。国立新美術館におけるクリエイティブディレクターの展覧会は初。

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佐藤オオキ(nendo)

“東京とミラノに拠点を持ち、建築、インテリア、プロダクト、グラフィックと幅広くデザインを手掛ける。06年Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」に選出”
(ウェブサイトより引用)

現代の一休さん的な、とんちの効いた発想や逆転の発想 など「なるほど!」という解決方法でプロダクトを生み出す天才。ミニマルなのですが、デザインにはかわいさや、ユーモア、やさしさのようなものをふっと感じます。

彼らはなぜアーティストになれたのか

上記に挙げさせていただいたデザイナーの皆様は、
空間演出やアート作品も手掛けるアーティストの側面も持ち合わせています。

しかし、それは単に自分の表現したいものを作ってきたのではなく。仕事の大小問わず常に高いレベルでクライアントの要望を包括し、自分というフィルターを通したアウトプットを行い、さらに結果を残し続けてきたことで「あなたのスタイルに任せたい」という信頼を勝ち取ったのだと思います。

デザインするモノが、製品であってもグラフィックであっても、空間であっても、
「そこにふさわしい姿は何か」を問い続けたデザインは、哲学や詩のような情緒的な雰囲気を携えるようになり、
アートやデザインという境界線を越えて見る人の心や感情を動かしたり、人の根源的な欲求を刺激するモノになるのかもしれません。


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