「デザインイタコ」への道 ~デザイナー修行~
皆さんお久しぶりです。今回は、
私のデザイン対する考え方に影響を与えたストーリーを少しご紹介してみようと思います。
昔、企業内でデザイナーをしていた頃、とある先輩デザイナーに
「イタコになれ。」
と言われたことがあります。
「え?イタコってあの、シャーマン的な人に転職ですか…?」
キミの好みを作るんじゃない
企業デザイナーは、色々なユーザーに合った商品を作る為に、
様々なデザインテイストへの対応が求められる場合があります。
ターゲットユーザーが男性の場合もあれば女性の場合もあり、
20代の場合もあれば、50代のこともあります。
当時駆け出しデザイナーだった私は、
自分の好きなデザインテイスト以外のデザインや、
自分とは違うタイプのユーザーの好みを理解しようとしておらず、
こういうデザインが流行っている!こういうデザインが正解!という思いこみがありました。
しかし、求められているデザインに私の好みは関係ありません。
当然、こうして出来たデザインではターゲットのユーザーに受け入れられない。
「キミの好きなデザインを作るんじゃないんだよ。やり直し。」
という判断が下されます。
力なく頭を垂れる私に、先輩が放った一言が「イタコになれ。」だったのです。
まさに、ユーザー自身になって考える
イタコ とは、先祖や死んでしまった人の霊と繋がり、
亡き人のメッセージを受け取る祈祷師の事です。
先輩が言いたかったのは、イタコに転職しろという事ではなく、
ユーザーの魂が自分に降りてきたと思って、その人になったつもりで考えなさい。
という教えでした。
様々なユーザーの立場・年齢・性別で違う好みや目的が理解できなければ、
その人に合ったデザインは生み出せないという訳です。
思考はユーザー、手はデザイナー
私は40代でメーカー勤務。ジャケパンでもOKだけど顧客訪問の時はスーツが多いかな。
こないだ乗った新幹線のWedgeでこんな商品が紹介されていたな。
あ、グリーン車には乗ってないんだけどね。
機能性は大事だけどオジサンくさいやつはやめとこう。
ブランド品じゃなくてもいいけど、見るからに安っぽいやつはダメだね。
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ユーザの姿や思考が具体的に見えてくると、やっと
「こういう環境に居たらこんなカタチを選ぶだろう」
「こんな色だったらいいなと思うだろう」
と、これまでとは違う角度から物事が見えるようになってきました。
頭はユーザーの思考の状態で、
手はデザインソフトウェアなどの技術を使い、カタチにしてゆく感覚です。
これが先輩の言っていた事なのだと。
その時、僕もデザインイタコに近づけた気がしました。
ペルソナのその先へ
ユーザー像を明確にするというのは、
ビジネス用語では「ペルソナ(マーケティング)」と呼ばれます。
ペルソナは、ターゲットをより詳細に、
想定ユーザー像の年齢・職業・家族構成・ライフスタイルなどの特徴をリアルに細かく設定・リストアップして、
その人に向けて商品を開発する手法で、マーケティングにおいてとても重要な事ではありますが、やや客観的な視点です。
デザインイタコには、想定ユーザー自身の主観的な思考になる・共感力が要求されます。
デザイナーにもスタイルがある
ユーザーになって考えるという事は、私の考えに深く根付いていて、
私は、クライアント「らしさ」のあるデザインをつくる。という事を推しているのですが、
クライアントの好み・影響を与えた事柄・目指す姿、
クライアントのお客さんの事などをお聞きして、それを元にデザインの姿を考えています。
そして少しだけ、自分の経験や法則などを基に、こうした方が良いものができると思います。
という意見を添えるようにしています。
今回は、私のデザイン対する考え方に影響を与えたストーリーでしたが、
世の中にはイタコスタイルではなくデザイナー自身の審美眼や哲学的な物事の解釈を活かして、
現代美術館などに収蔵されるような芸術的な作品を作り上げるデザイナーもいるのですが…
それはまた別のお話。ということで。